イントラネットのチェックに役立つKPIと指標トップ15
アーサー・J・ギャラガーアンドカンパニーの調査によると、組織の半数以上(60%)が、長期的な社内コミュニケーション戦略を策定していないことがわかりました。ホリンガー・スコットが行った別の調査では、従業員が社内コンテンツを見ているかどうか把握していない企業が41%あることも明らかになりました。しかし、イントラネットを成功させるための重要なポイントの一つは、従業員が社内コンテンツを見ているかどうか適切にチェックすることなのです。
イントラネットとは?
イントラネットは、従業員が社内限定の情報にアクセスできるプライベートネットワークです。
また、組織内の仕事の流れを管理するのにも使われます。
イントラネットの例としては、銀行が従業員に変更点や情報を伝えるのに使用している社内ウェブサイトなどが挙げられます。
デジタルな職場におけるイントラネットのメリット
イントラネットは、オンラインプラットフォームやソーシャルメディアと統合可能です。
統合させれば、次のような複数のメリットをもたらす強力な社内コミュニケーションツールができあがります。
1. 従業員がコミュニケーションや協働をするのに役立つ
仕事に必要な情報を探すのに、従業員は勤務時間中に多くの時間を費やしてしまうことがありますよね。
イントラネットには通常、従業員のプロフィールセクションがあり、従業員の保有資格や興味、専門分野に加え、役職や写真、連絡先などが掲載されています。
プロジェクト進行中にサポートが必要となった従業員は、このプロフィールを見てほかの従業員に助けを求め、直接メッセージを送ることができるのです。
2. 情報やファイルを管理するのに便利
社内イントラネットを使うと、情報やファイルを一か所から簡単に見つけることができます。
これにより従業員は、検索ではなく協働や生産的な仕事に集中できます。
3. コンテンツ管理システム (CMS) を簡単に設定できる
従業員は今日、ブログやソーシャル機能、ディスカッションフォーラムの情報源としてイントラネットを利用できます。
これは従業員エンゲージメントを高める重要な要素であり、彼らが自分の意見を伝えることを可能にします。
その例としては、従業員満足度調査などが挙げられます。
社内コミュニケーションを把握するための主要なイントラネット指標とKPI(重要業績評価指標)
イントラネットがベストな結果をもたらしているかどうか、企業はどのようにして知ることができるでしょうか?
多くの場合、企業はイントラネットの効果を決まった方法で測定します。
これらの重要業績評価指標(KPI)は、イントラネットがその企業でどれだけ効果的に機能しているかを明確に示してくれます。
— 従業員エンゲージメントKPI
従業員エンゲージメントKPIは、従業員が雇用主に対して感情的に関わっているかどうか、そして企業の目標達成に貢献しているかどうかを測定するためのツールです。
仕事で気持ちのつながりを感じている従業員は、より良い成績を収め、企業に長くとどまる傾向が見られます。
1. アクティブイントラネットユーザー数と利用時間
このイントラネット指標は、従業員がシステムに関連性があると感じているかどうか、実際に使っているかどうか、どのくらいの頻度でアクセスしているかを示します。
従業員は興味がない、もしくは役に立たないものにはあまり時間を費やさないため、彼らがログインしている時間を把握すれば、貴重なデータが得られます。
モバイルアプリのトラッキング機能を使えば、従業員が社内イントラネットにどこからログインしているか把握することもできます。
従業員全員がオフィスからアクセスするわけではありません。このように、イントラネットの使い方がリモートワーカーとオフィスワーカーで異なるかどうか知ることは役に立ちます。
これはイントラネットソフトウェアまたは外部のパフォーマンス分析ツールから把握できます。
Google Analyticsは、こうした分析を目的として使用するツールの一つです。
2. クリック数、コメント数、シェア数
イントラネットユーザー数を把握するだけでは、従業員がシステムにアクセスしていることしかわかりません。
イントラネットの効果をより正確に測定するには、従業員がプラットフォームへアクセスした後に行ったクリック数とコメント数をカウントしましょう。
これにより、従業員のエンゲージメントレベルをより正確に把握できます。
また、社内コミュニケーションのレベルが向上したら、イントラネットの全体的なパフォーマンスを測定するのにも役立ちます。
次の指標を参考にしましょう。
- 「いいね」「大好き」「嫌い」などのリアクションクリック
- タグづけ
- ブログやニュース記事、その他のコンテンツに対する従業員のコメント
- 新しいコンテンツを作るイントラネットユーザー
- 記事のクリック率
3. プラットフォームへのリーチ率
前のバージョンのイントラネットプラットフォームでは、プラットフォームに従業員全員が参加することはできませんでした。
リモートワーカーや営業担当者など、オフィス外で過ごすことが多い従業員は、イントラネットにアクセスする時間がオフィスワーカーよりも短くなることがあります。
そこで、モバイルアプリを導入したり、リモート認証とクラウドを安全なものにするために移行したりすれば、従業員は場所を問わず簡単にログインできるようになり、リーチが向上するはずです。
リーチ率を判断するには、設定した期間内にイントラネットプラットフォームに登録した従業員数、また可能であれば訪問数をチェックします。
次に、この数を企業の総従業員数で割ります。
その合計は、全体のリーチ率とほぼ等しいはずです。そして過去の値と常に比較し、その期間中の従業員のリーチ率がどれくらい増えたか把握することが重要です。
4. ユーザー生成コンテンツのページ数
ユーザー生成コンテンツは、イントラネットの成功とどのような関係があるのでしょうか?
実は、ユーザー生成コンテンツは、イントラネットに対して従業員がどのような感情を抱いているのか、そして仕事にエンゲージメントしているかどうかと密接に関係しているのです。
コンテンツの大部分を生成しているのは少数の従業員ですか?それともたくさんの従業員が関わっていますか?
質の高い、読者を引きつけるようなコンテンツを制作していますか?イントラネットプラットフォームとソーシャルメディアで最も人気のあるトピックは何ですか?
これらのイントラネットKPIを把握することで、ユーザー生成コンテンツが社内に与える影響力を測定しましょう。
- イントラネットプラットフォーム上にあるすべての従業員生成コンテンツ
- 従業員が最も貢献している場所
- 従業員がコンテンツ作成に費やす時間
- どのトピックがトレンドになっているか
- 従業員が生成したコンテンツが、ほかの従業員にクリック・閲覧・共有される回数
5. トップイントラネットユーザー
トップイントラネットユーザーとは、プラットフォームに最も長く滞在している従業員のことです。
トップイントラネットユーザーには、イントラネットアンバサダー(企業の「スーパーユーザー」またはインフルエンサー)として選ばれた従業員と、社内イントラネットを自然とよく使用している従業員がいます。
イントラネットに最も熱心に関わっている従業員を把握することには価値があります。
彼らは、プラットフォームのどこが気に入っているのか、何が自分に合っているのか、どの機能が操作しにくいと感じているのか、といったことを正確に報告できるからです。
プラットフォームのことを最もよく知っているのは彼らですので、変更してほしいことや改善してほしいことはないか、聞いてみるといいでしょう。
こうした経験豊富なイントラネットユーザーは、社内イントラネットのことを新規採用者に教える役割を担うこともできます。
新規採用者は実際、IT担当者や人事部にサポートしてもらうより、気になることは従業員同士で共有したいと思っているかもしれません。
トップユーザーを見つけるには、イントラネット上の議論に最もよく参加している人を探しましょう。
彼らがプラットフォームに最も長く滞在している人たちです。
部署のなかで最も多くのページを訪れている人を確認するために、ユーザーレポート分析を行います。これらは、イントラネットに最も多くの時間を費やしている人たちです。
6. 最も閲覧された項目
企業のコミュニケーションを管理する担当者は、イントラネットに掲載された企業ニュースが従業員に読まれているか、消化されているかどうか知りたいと考えています。
これは、企業の全体的なコミュニケーション戦略において重要な部分だからです。
イントラネットは、ワークグループが互いによりコミュニケーションをとるようにするために使われます。
イントラネットは、あらゆるコンテンツを従業員と共有するための強力なツールなのです。
イントラネットユーザーは、主要なプラットフォームにアクセスできることに加え、質の高い情報と有益なコンテンツを閲覧できることがわかっていれば、情報源として、そして仕事に役立つリソースとして、イントラネットを繰り返し利用するようになるでしょう。
特定の期間(1週間または1ヶ月など)に、イントラネット上のどのコンテンツが最も多く閲覧されたか調べるには、イントラネットのセクションに移動して、その期間中に最もページビューが多いコンテンツを確認します。
最も人気のある項目が似たようなトピックのものであるかどうか、同じ形式(ブログ投稿、PDF文書、PowerPointプレゼンテーション)であるかどうか、そして同じような文体(フォーマルもしくはカジュアル)であるかどうかを記録しておきましょう。
7. 最も閲覧されていない項目
社内イントラネット上で最も人気のある項目に加え、従業員から共感を得られなかった項目を把握するのも参考になります。
これは、最も閲覧された項目を把握するのと同じくらい重要です。ページレビューが少ない項目は、古くなった項目、またはアップグレードや変更により、従業員にとって関連性のない情報を含む項目の可能性があります。
こうした項目がもはや従業員に関連がないことを特定し、そうなった理由を理解することが重要です。
閲覧数の少ない項目は、プラットフォーム上でスペースを取って検索結果をわかりにくくするだけです。
したがって、それらは削除する(もはや関連性がないことが確実な場合)、またはアーカイブする(あとで誰かが参照する必要があるかもしれない場合)のが妥当でしょう。
最も閲覧されていない項目を見つけるには、特定の期間中に最もページビューの少ない項目を特定します。
最も人気のない項目を特定するよりも長い期間(3ヶ月または6ヶ月)をかけるのがベストです。
— 従業員幸福度KPI
全体的な従業員幸福度には、公正な報酬や評価、エンゲージメント、そして強力なリーダーシップといった要素が含まれます。
エンゲージメントや従業員の仕事に対する満足度の向上に取り組まなければ、高い給料をもらっているにもかかわらず仕事に必要な最低限のことしかしない従業員、もしくはより給料の高い仕事を探すのに一生懸命な従業員のいずれかになってしまう可能性があります。
8. 従業員満足度
従業員が仕事に満足しているかどうか知る方法は何でしょうか?最も簡単な方法は、従業員に聞いてみることです。
社内イントラネットは、企業全体の経験や生産性を向上させるためのテクノロジーであるはずです。
従業員の考えや気持ちを把握するために、従業員満足度調査の実施を検討しましょう。
従業員は、信頼できる上司に対しても、仕事に対する自分の気持ちを共有するのにためらいを感じているかもしれません。
しかし、匿名のオンライン調査であれば、企業が行っていることや改善できそうなことについて、率直な回答を得ることができます。
イントラネット自体に関する率直なフィードバックを得るために、従業員に次のような質問をしてみてください。
- 社内イントラネットに満足していますか?どのような変更や改善をしてほしいですか?
- 全体的なコミュニケーションが改善されたと感じますか?
- イントラネットは使いやすいですか?それとも操作が難しいと感じますか?
- イントラネットを使うことで、オフィス内の従業員との協働がより簡単で便利になりましたか?リモートワーカーとの協働はどうですか?
9. 従業員の離職率
従業員の離職率と従業員満足度は密接に関係しています。
家族が引っ越すから、復学を決めたから、または退職したいからという理由で辞めてしまう従業員は常にいるでしょう。
目標は、従業員の大多数が、自分には権限が与えられており、サポートされ、生産性があると感じられる職場の雰囲気を作ることです。
彼らは仕事をうまく行うために研修を受け、雇用主が自分の声に耳を傾けてほしいと思っています。
これらの要素が整っていないと、彼らの仕事に対する満足度が低下し、ほかのキャリアを求めて転職することを視野に入れてしまうのです。
従業員の離職率を測定するには、人事部の記録を使用します。
イントラネットプラットフォーム導入前と導入後で、新規採用と定着率を全体的なエンゲージメントと比較して、間接的な指標を分離します。
10. アドボカシー
うまく機能するイントラネットを導入することは、従業員満足度への投資となる可能性があります。
従業員というのは、社外のブランドアドボケーター(ファン)にも、仕事仲間にもなりえます。そのため、マーケティングチームの活動を、より良い口コミとリアルな評価によって強化できるのです。
その方法は簡単です。
ソーシャルメディアサイトに共有してアップロードできる、パーソナライズされたコンテンツを設定することを、従業員に許可しましょう。
従業員をアンバサダーに変えることで、社内でも社外でも、その従業員が積極的に取り組んでいる様子を見ることができます。
その後、イントラネットのKPIダッシュボードを介して、次のような指標でアドボカシーを測定しましょう。
- イントラネットからソーシャルメディアへの外部共有数
- その結果生じる交流、またはブランド認知度の組織的な向上、社内外に送ったメッセージの取り消し
- 従業員が作成したブログ記事の数
- 従業員がソーシャルメディアでニュースを共有したり、企業のことを宣伝したりする可能性があるかどうかを測定する従業員調査の結果
— ビジネス優位性KPI
このデータを収集し、あらゆるエンゲージメントデータを分析する究極の理由は、より大きなビジネス目標に影響を与えることです。
11. 低いビジネスコスト
従業員エンゲージメントとコミュニケーションの向上は、ソフトウェア導入後にイントラネットが成功する要因のわかりやすい例かもしれません。
通常、生産性の向上がビジネスコストの削減と同時に起こるということは、わかりにくいものです。
デジタルを推進している職場は、紙や印刷コストの削減、情報収集や新規採用者の教育に費やす時間の削減など、さまざまな方法でコストを節約することができます。
企業がリモートワーカーを採用している場合、物理的なスペースを持つ必要がなく、不動産コストを節約できます。
従業員はデジタルを用いて協働できるため、出張や移動にかかるコストの削減も可能です。
また、経費の申請書やそのほかのフォームを、より効率的にデジタル形式で人事部に提出することもできます。
ビジネスコストを削減できているかどうか確認するには、次のような項目の測定を検討しましょう。
- 管理コストおよび関連経費
- 管理タスク (給与計算、従業員関連の書類作成、経費管理) に費やす時間
- 新規採用者の教育に必要な設備
12. 販売の向上
営業チームがより簡単に情報にアクセスできるようになると、全体の生産性も必然的に向上します。
そしてその結果、販売レベルも向上する可能性があります。
また、カスタマーサービスやマーケティングチームとのコミュニケーションと協働が改善されれば、既存顧客だけでなく、新規顧客への販売にも波及効果が期待できます。
営業担当は、イントラネットを起点としてアイデアや情報を関連チームと共有したり、共同作業を行ったりできます。
これが見込み客の獲得や成約件数の増加につながる可能性があるのです。こうした施策の効果を測定するには、次のようなことを検討しましょう。
- 社内情報の検索にかかる時間の短縮と、その結果生じる、見込み客やミーティング、その他の件数の増加を分けて測定する
- 営業チームに調査を実施する
13. 生産性とタイムマネジメントの向上
生産性や時間は抽象的な概念ですが、測定することは可能です。
ニールセン・ノーマン・グループが行った調査によると、使い勝手の悪いイントラネットを利用している、従業員1万人を抱える企業では、年間で最大1,500万ドルの生産性が失われる恐れがあるとしています(評価の高いイントラネットを利用している企業と比較した場合)。
これはすなわち、イントラネットのパフォーマンスが原因で失われている時間とお金です。
ニールセン・ノーマン・グループは、イントラネットの管理、コンテンツ、デザイン傾向、検索ツールの使いやすさ、従業員の利用状況を追跡しました。
これらの要素は、イントラネットソフトウェアの生産性を測定するための社内調査に転用できます。自社における結果を測定するために、次の項目のチェックを検討してみてください。
- 特定のタスクを完了するまでの時間(イントラネット導入前と導入後)
- 文書検索に費やす時間
- IT関連の部署にサポートを求めたコール件数
- イントラネットプラットフォームのヘルプデスク機能を使用した回数
14. マーケティングの強化
イントラネット分析の最善策として、さまざまな戦略が社内でどのように機能しているか測定するために、関連する社内データを収集することが挙げられます。
また、イントラネット導入後、社外のマーケティング成果に関するデータを収集するのも合理的です。
その場合、従業員の行動だけに焦点を当てるのではなく、顧客サービス担当が、イントラネットをナレッジベースとして使って対応した電話の満足率など、従業員の行動に対する消費者の反応を把握するよう検討してください。
ソーシャルアドボカシーの場合、ソーシャルメディアでのシェアから生じるウェブサイトのクリック数、そのコンテンツに基づいたエンゲージメント(いいね、コメント、シェア数)、特定の共有コンテンツから生み出された見込み客などは、どれも同じくらい示唆に富む指標です。
これらの結果は、社内イントラネットのおかげでマーケティングが全体的に向上することを示しています。
その成功を測定するために、次のイントラネット指標のチェックを検討してみてください。
- 社内イントラネットにあるコンテンツの、従業員によるソーシャルメディアサイトへのシェア数
- 従業員がシェアした投稿に対する外部ウェブユーザーのクリック数
- これらのクリックから生み出された見込み客、顧客、売上
- イントラネット導入後の全体的な消費者の認知度
15. 組織目標
このカテゴリーの組織目標は、各企業ごとに異なります。
イントラネット分析の細部にこだわりすぎると、全体像を見失う可能性があります。
イントラネットKPIダッシュボードで組織固有のKPIを要約し、次に重要な洞察、実行されているステップ、KPIの定義を記載すると、良いスタートが切れます。
イントラネットは、その企業が重要としているものに合わせた分析ができます。これらは時間とともに、そしてビジネスが成長するにつれて変化していくでしょう。
当初は、ユーザーの導入が最も重要だったかもしれませんが、その後は質の高いパーソナライズされたコンテンツやオンボーディングジャーニーなどの開発が続いていくでしょう。
イントラネットの導入を成功させるためには、単に従業員にテクノロジーを与えるだけでは不十分です。
継続的にチェックしたり、イントラネットのさまざまな成功要因を測定したり、状況に応じて変更したりする献身的な姿勢が、長期的に好ましい結果を生み出すためには不可欠なのです。