社内でナレッジシェアリング文化を構築する10のステップ
職場の文化は変化してきており、互いに競争させるのではなく、協働を促すような環境へと移り変わりつつあります。従業員同士が敵対しあうような職場は、企業にとってベストな結果を生み出しません。より良い方法は、アイデア共有を基盤とした、思いやりと協調性に満ちた職場文化を取り入れることです。
ナレッジシェアリング文化とは?
すべての組織には文化が存在します。文化とは、組織メンバー (従業員の場合) の行動基準となる規範や価値観のことであり、従業員の振る舞いを導くものです。
ナレッジシェアリング文化では、従業員同士の協働が日常的になります。職場環境はポジティブなものとなり、チームメンバーは互いに助け合うことが期待されます。
従業員同士は協働を通して相手を知るよう促され、勤務時間中に気軽に交流する機会も設けられます。
こうした開かれたコミュニケーションが推奨される環境では、知識はチームメンバー間だけでなく、経営層や従業員など、上下方向にも共有されます。
従業員はCEOへのフィードバックや、経営層の意思決定に関する質問を促されます。また、部署間や業界関係者とも知識が共有されます。
現代のテクノロジーが進歩したことにより、人々の協働や情報交換が容易になったのです。
ナレッジシェアリング文化を構築するメリット
前述したナレッジシェアリング文化の定義からもわかるように、このアプローチを採用する主なメリットの一つは、従業員が協力して働くようになることです。
従業員たちはお互いをライバルではなく、協力者ととらえるのです。
このような職場環境は従業員エンゲージメントを高め、チームとしての知識を育み、強固な企業文化を築くのに役立ちます。ほかにも以下のようなメリットがあります。
- 仕事における心理的安全性が確保される - ハーバード・ビジネススクールのAmy Hudson氏によると、心理的に安全な職場とは「従業員が恐怖に怯えず、恥をかいたり、責められたりするのを避けるために自分の行動を隠そうとしない」職場のことです。従業員が失敗してもネガティブな結果を恐れなければ、自分が知らないことを素直に話せるようになり、上司やほかの従業員が知識のギャップを埋めることができます。
- 知識の独占を防ぐ - みんなの中心にいた従業員が退職すると、その人が持っていた知識も企業から一緒に出ていってしまうもの。でも、ナレッジシェアリング文化が定着していれば、あらゆる情報が社内の様々なチャネルを通じてすでに共有されているため、その人がいなくなっても、現従業員および将来の従業員がその恩恵を受けられるのです。
- 全体生産性が向上する - ナレッジシェアリング文化の最大の利点は、職場がより生産的になることです。これは従業員が自由に働いたり、知識を共有したりできるからです。また、独創的に考えることで、仕事に遅れが出る可能性も低くなります。そして、昔からある難題に新たな解決策を見出したり、新製品を生み出して企業を成功へと導いたりすることもできます。ナレッジシェアリング文化は、よりスマートに働くための一つの方法なのです。
ナレッジシェアリング文化を構築する方法
ナレッジシェアリング文化を構築するメリットがわかったところで、実際に構築するにはどうすればいいのでしょうか?
以下ではそのための10のステップをご紹介します。
1. オープンドアポリシーを制定する
従業員が信頼されていると感じなければ、開かれたコミュニケーションは生まれません。
従業員が会社の誰に対しても、いつでも質問したり情報を求めたりできるような雰囲気を作るべきです。
質問したりわからないと発言したりすることで、周りからどう思われるか恐れることなく、気楽な気持ちでいられるようにしてあげましょう。
その人にとっては知識を共有してもらい、教育してもらう機会であって、決してその人に恥をかかせるような場であってはいけません。
質問した人がサポートや理解を受けられるようになれば、いざ自分に知識を共有する機会が巡ってきたとき、より積極的に応じられるはずです。
2. ナレッジシェアリングプラットフォームを導入する
あなたも従業員も、大事な情報を探すのにたくさん時間をかけていませんか?連絡先を見つけたり、電子カレンダーを整理したりするのに苦労していませんか?チームメンバーとコンテンツを共有するのが難しくありませんか?
そういう場合は、お使いのナレッジマネジメントシステムを見直さなければなりません。適切なプログラムを使えば、日常業務で使用している機能を効率化できます。
クラウドベースのナレッジシェアリングプラットフォームは、シェアリング文化を向上させ、ファイルやフォルダ、メールやカレンダーを整理してくれます。
また、同じオフィスで働いているメンバー同士でも、リモートで働いているメンバー同士でも、コンテンツやほかのプロジェクトに関してチームメンバーと簡単に共同作業をすることができます。
3. ナレッジシェアリングを積極的に奨励する
机に向かって黙々と仕事をする時代はもう終わりです。 今の職場は協働が基本です。
ただし、なかには自分の知識を周囲と共有することに抵抗を感じる従業員もいるため、まずは彼らが取り組めることから始めましょう。
たとえば、顔を合わせて共同作業を行う時間を設けてみてください。人によっては積極的に発言したがるので、そういう従業員にはどんどん発言を促しましょう。
また、コンテンツを従業員と定期的に共有してください。 経営層からも積極的に行うことが重要です。そうすることで、協働とナレッジシェアリング文化が企業全体に浸透していきます。
4. ナレッジシェアリングに貢献した従業員へ褒美を与える
ナレッジシェアリング文化が自然に身につくとは限りません。
そこで、従業員が積極的にナレッジシェアリングをしたり、チームで役立つコンテンツを見つけたりしたときにはインセンティブを与え、彼らのモチベーションを高めましょう。
たとえば、一定期間内にナレッジシェアリングに参加した全員に景品をあげるという方法があります。
この方法を選んだ場合は、参加者全員にコーヒーショップのギフト券のようなちょっとした景品をあげましょう。
もう一つの選択肢としては、一定期間後に全参加者から抽選するというものがあります。
この方法を選んだ場合、抽選の対象期間を長く設定することで(1〜2ヶ月程度)、従業員がナレッジシェアリングをする機会を増やし、当選確率を高めることができます。
景品は、マグカップやバックパック、Tシャツといった仕事に役立つアイテムに加え、テレビやバーベキューグリルなどの高額なものも用意することで、従業員の参加意欲を高められます。
5. ミスしても大丈夫だと従業員に伝える
従業員が自由にアイデアを共有し、遠慮なく協働できる環境を作るためには、ミスは誰にでも起こり得るということを理解してもらう必要があります。
ミスというのは学ぶ機会なのです。
経営層や管理職が常に成功例ばかり共有していると、従業員が失敗したり、目標達成に貢献できなかったりすることに寛容ではないという印象を受ける可能性があります。
成功例と失敗例をバランス良く共有し、チームや企業がどのように失敗から学び、この先成長していくのか強調することで、従業員はより安心して知識を共有できるようになります。
6. 新規採用の従業員にメンターを割り当てる
優秀な人材を獲得することは企業にとって重要な課題ですが、新しく入ってきた従業員が緊張からすぐには知識やスキルを共有できなければ、貴重な時間を失う可能性があります。
彼らが最初から居心地良く、自分が企業にとって価値のある存在だと感じられるようにすることが重要です。
メンターというのは、彼らがいつでも質問や相談ができる相手です。メンターは上司ではなく、彼らが自分自身をさらけ出し、その企業に抵抗なく馴染もうと思わせてくれるような人であることが重要です。
メンターは良い模範となり、彼らが自分の意見を積極的に述べ、遠慮なく企業に貢献できるよう促しましょう。
7. 新規採用の従業員が、先輩の仕事を陰ながら学ぶ機会を与える
チームメンバーとの協調性と知識共有に長けた先輩従業員を見つけ、新規採用の従業員に数日間、その仕事を陰ながら学ぶ機会を与えましょう。
より経験豊富な先輩が、ほかの従業員や顧客、サプライヤーや自社以外の企業の代表者などと、どのように意見を共有するのかを見れば、同様の働き方に抵抗を感じることは少なくなるでしょう。
8. 従業員に直接意見を求める
従業員たちがどのようなことを考えているのか知る最善の方法は、直接尋ねることです。
勤務した企業や仕事の経験が少ないという理由だけで、彼らが価値ある知識やアイデアを持っていないと決めつけてはいけません。
常に複数の意見を取り入れ、ほかの従業員からのフィードバックを収集することが重要です。
最初は質問することに抵抗を感じるかもしれませんが、時間をかけて質問したり、フィードバックを提供したりすることで、互いに協力し、学び合うネットワークへと発展していくでしょう。
9. 従業員向けの交流イベントを企画する
仕事ばかりでは誰もがストレスを感じてしまいます。
業務終了後や週末に、従業員が参加できるアクティビティを企画しましょう。これは従業員同士がよりカジュアルな環境で交流し、互いを理解する機会を与えられる良い方法です。
特に最初の1時間は仕事の話は禁止、というルールを設けることで、よりリラックスした状態で交流できます。
アクティビティを選ぶ際は、誰もが楽しめるものにすることが重要です。難しいスキルや運動能力を必要とするアクティビティは避けましょう。
つまり、フットボール大会よりも公園でのピクニックのほうが良い選択だと言えるでしょう。
10. 従業員に辛抱強く接する
ナレッジシェアリング文化を新しい社内ポリシーとして導入する場合、従業員が適応するまでには時間がかかります。
これまで攻撃的な態度をとったり、ほかの従業員を競争相手と見なしたりするのが当たり前の環境で働いてきた従業員にとって、同じ目標に向かって協力して働くという新しい考え方に慣れるには時間がかかるでしょう。
これまでとは大きく異なる働き方に慣れた従業員は、彼らとの「適切な」接し方について考えを改める必要があります。
情報を共有し協力して働くという新しい方法は、ほかの従業員を潜在的な脅威と見なすよりもはるかにストレスが少ない方法であることは間違いありません。
ナレッジシェアリング文化がもたらすメリット、そしてその構築に向けたステップについて理解できたでしょうか?
思いやりと協調性に満ちたこの文化は、あなたの組織の目標達成に大きく貢献するでしょう。